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2人が食堂に駆け込むと席はかなり埋まっていた、人の波に流されながら食券を買う。今日の伊庭は何となくサンドウィッチの口だった。横目で祐希を見やるとカレーライスと印刷された食券を握りしめていて、ちょっと朝から張り切りすぎやしないかと思った。
「げ、お前カレー?」
思わず声をかけると文句でもあるのかと言いたげな蒼っぽい目がこちらを向いた。
「悪いか」
「いや、尊敬のげ」
「嘘つけ」
乳白色のお盆の上に食券を置く。お盆を飾る金縁を指で撫でながら、この金縁は要らないよなぁと、金持ちをここで主張する必要性がちっとも伊庭には理解出来なかった。
「智迅、次お前」
「えっ」
これだから朝はいけない。ぼんやりしていたら、自分の番が来たらしい。
「お願いします」お盆をおっちゃんに渡す。
「めっちゃぼんやりしてた」
「でしょうな」
ハッとスカして鼻で笑う祐希の肩をどつくけれども、ビクともしないのが憎たらしい。
「お前ゴツクね?」
「そう?」
「帰宅部ニートの癖に」
ボソッと呟くと、聞こえたらしい祐希が怪訝そうな顔をしてこちらを向く。
クソ野郎、聞こえていたのか地獄耳が。
「別に関係ないぞ」
「お前なぁ、まじで」
「智迅クンは弱っちぃねぇ、」
祐希の癖していっちょ前に煽って来る、人前ではクールぶってるのけど、こういう所を見るとまだまだ子供らしい。
自分のことを棚に上げて伊庭は思う。
「は、黙れ」
「そんなんで風紀委員長ってほんとに?」
「それがほんとなんですヨ」
祐希が、次に口を開く前に陽気な声がかかる
「はい、伊庭くんどうぞー」
おっちゃんはにこっと仲良いね、なんて笑いながらサンドウィッチのお盆を渡された。
ちょっとばかし、むすくれながら伊庭は「ありがとうございます」とモショモショ言って受け取った。
「智迅、席どこにする」
「埋まってるよね、」
「ウン、どうしような」
2人で顔を見合わせていると、後ろの方から呑気そうな声が掛かった。
「智迅先輩!あとね、篠原先輩も!ここ空いてますよォ!」
「おっ、」
「お前の所の後輩か」
ブンブンとちぎれそうなくらい手を振るのは和人だった、彼が座っているのはテーブル席だった。しかも1人で、
「お前、ひとりでどうしたの」
「いやぁ、2人を見つけたて呼んだっけね、友達が逃げちゃいまして」
「それ、まずいだろ」
祐希の声に激しく頷く、今、俺たちよりも友達を今すぐ呼び戻した方がいいと思う点では伊庭と祐希は一致していた。
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