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超名門の江平高等学校。1度はその名前を聞いたことがあるはず、なんと言ったってこの学園からは政治家はもちろん大企業の社長、世界を股に掛ける俳優やスポーツ選手が多数輩出されている!
特徴━━━━━━━━━━━━━━━━━━
広い校舎をのびのびと使い、健やかに生徒を育てる。
我が校のは社会経験のため生徒の一人一人が学校を作り上げられるように、学園の自治を生徒に任せ生徒の自主性を育てる。
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君も是非!江平高等学校へ!
……以上パンフレットより引用
パタン、と伊庭は机の中からたまたま出てきた江平高等学校のパンフレットを閉じた。
「何してる、もう時間が無いぞ」
伊庭が顔を上げると、ルームメイトである篠原祐希が見事な仁王立ちで伊庭を見下ろしていた。
校舎が広いのでこの寮から食堂までゆうに10分は歩かなくては行けない。それを考えるともう、部屋を出なくては間に合わない時間だ。
「どうしたんだ、パンフレットなんか見て」
「…別に、懐かしいじゃん?」
にゅっと白い腕が伸びてきて、伊庭の手からパンフレットをまんまと奪い取った。
「……捨てればいいのに」
「捨てらんにゃいのですよ」
伊庭はフッと息を吐いて、そろそろと学校のための準備を始める。
「お前、まだパジャマだったのか」
返事は返さずに伊庭はただ一心不乱にシャツのボタンを止める。
そしてベットの縁に無造作に掛けられた紺のブレザーをサッと羽織り、3つの金のボタンをプチプチと止めた。
「準備は?」
「あと40秒待って」
艶の良い黒髪を何となくで撫で付ける。
アラ、今日は湿気が酷いのネ。ぴょこぴょこと枝毛が跳ねて、いつもより頭が大きく見えた。
「……良かろう、3分間待ってやる」
「ア、増えたな。これはラッキー」
「嘘、うそ」
ケッと、吐き捨てるように祐希がほざく。
ネクタイを結んで、チョイとお気持ち分だけワイシャツの襟を直した。
「ところでさ、お前今日鏡みた?」
振り返ると不思議な表情をした祐希がぼうっとこちらを見てくる。
「?」
ちょっとばかりバイオレンスな手先を持つこの男は、いかにも自分は用意できていると言わんばかりにモーニングコールをしてきたにも関わらず。
今日も例の通り襟が立っていて、おまけに寝癖すら直っていないのだった。
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