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そんなある日、美紀は「レナ」と出会った。
塾が始まる前のひと時、家と塾の真ん中にある小さな児童公園で。
カバンを置いて、ブランコに揺られながら単語帳を暗記していた美紀はいつのまにか隣のブランコに立ちこぎで乗っていたレナの存在に気が付いた。
水玉のシュシュで結ったポニーテールがすごい勢いで揺れている。
レナは美紀と目が合うと、ニカっと白い歯を見せて笑った。
「何読んでるの?」
「読んでるんじゃなくて覚えてるの、単語」
「タンゴ? タンゴならあたし踊れるかも」
レナは「立ちこぎ」がうまかった。
ブランコはどんどん勢いを増して、ブランコの鎖がほとんど地面と水平になっている。
あぶないな、と思った瞬間、レナが手を離した。
「きゃあ」
思わず美紀は両手で顔を覆った。
けれどレナはブランコの柵を軽々と飛び越え、地面に上手に着地した。
「あしがしびれる~」
涙目になって体をすくませ、レナは足から脳天へ突き抜ける衝撃をやり過ごした。
そのあと美紀を振り返り、
「あたし、レナ」
と自己紹介した。
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