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「家出したの?」
ずんずんとアテもなく歩いている美紀の隣に、いつのまにかレナが並んでいた。
「レナ」
「カッコいいじゃん、美紀」
レナがそういって、いつものようにニカっと笑ってくれたので、美紀は少し気が楽になった。
「うん、家出する」
美紀は強がりを言った。
「お嬢様も大変だね」
レナは肩をすくめて美紀に同情した。
二人が大緑川に掛かった橋に差し掛かったとき、クウ~ンと弱々しい仔犬の鳴き声に気が付いた。
「見て、レナ」
「うん!!」
川の浅瀬に仔犬が流れついていた。
二人が近づいても逃げる体力もないようだった。
小さな体を縮こめて、ぶるぶると震えていた泥だらけの仔犬を美紀は抱き上げた。仔犬はクゥンとか細く鳴いた。
「美紀?」
美紀は橋を渡らず引き返した。
「だいぶ弱ってるね」
レナが言った。
美紀は仔犬を抱きしめた。
トクトクと聞こえる心臓の音。
「ウチ来る?」
「いいの?」
美紀は顔を輝かせた。
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