優しい友達

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 レナの家は川向うの建売住宅群ではなかった。  その奥の入り組んだ住宅街の一軒で、近くで見ると古いが大きな洋風の邸だった。 「今、家族はいないんだ」  とレナは玄関を開けてくれながら言った。  玄関は広いホールになっており、美紀は緊張しながら靴を脱いだ。 「お邪魔します」 「どうぞどうぞ」  レナが牛乳を温めて持ってきた。  匂いを嗅いだだけで、仔犬は困ったように小さく尻尾を振った。  二人は仔犬の体を拭き上げ、擦って温めたが仔犬は目をつぶってじっとしているばかりだ。 仔犬が弱ってしまうのを、美紀とレナは手もなく見守るしかなかった。 「やっぱり、病院へ連れて行かないとこのままじゃ…」 「家に戻る?」  美紀は頷いた。  ママに頼んで動物病院へ連れていってもらうしか、仔犬を救う手はなかった。 「家に戻ったらママに怒られるんじゃない? 仔犬もまた親戚へやられちゃうかも」 「それでも、命が助かるならそのほうがいい」  美紀は意を決して仔犬を抱き上げ、玄関へ向かった。 「そっか、そうだよね」  レナはいつものように美紀の意見に賛成してくれた。  美紀は仔犬を抱いて、レナの家を出た。  
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