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「大袈裟だな。こんなの普通だろ?悠は大切な仲間なんだから」
玲はなんてことなくそう言った。それが悠には耐え難いほど嬉しい。
「仲間……そう、ですか」
「うん!じゃあ、またな!」
玲はそう言って颯爽と去って行った。部屋に一人残った悠は、受け取った紙袋をぎゅっと握りしめる。そして、愛おしそうにその袋を抱き締めたのだった。
悠は玲を慕っている。
それは思慕なのか、恋慕なのかわからない。
憧憬なのかもしれない。
だからこそ悠は、玲の隣を許される王様や騎士を疎ましく思っている。
玲の隣でその声で名を呼んでもらえる二人が妬ましく、羨ましい。
自分も、その場所に……。
そんな勝ち目のない勝負はせず、一歩下がって玲が振り返るのをひたすら悠は待つ。
玲は誰にでも優しく、そして平等だ。そんな彼女の特別になりたくて、必死になる自分を客観的に見て悠は滑稽だなと思っていた。
***
そんな玲に異変が起きたのは、それから暫く経った頃だった。
悠は相変わらず研究室に籠る日々を送っていたのだが、研究が思ったように進まず、その日は息抜きにと部屋から出たところで偶然にも玲に会った。
「あ、悠!」
声をかけられて振り向くと、そこには嬉しそうに笑う玲の姿があった。
その笑顔を見て悠の心は弾む。しかしそんな悠の気持ちとは裏腹に、玲の顔色はあまりよくなかった。それに少しやつれているようにも見える。
「……どうかしました?顔色があまり優れませんが」
「え、いやいや大丈夫。ちょっと疲れてるだけだからさ」
「それなら良いのですが……あまり無理はなさらないように」
悠はそう言って立ち去ろうとしたが、玲に腕を掴まれる。その手はとても弱々しかった。
「どうしたんですか?」
「あ、いや……」
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