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眩しいくらい綺麗な玲の笑顔。安心したのか紡がれる他愛もない言葉の羅列。他の者ならうざったくてしょうがないそれも、玲の声だと不思議と悠は嫌にならなかった。
それは、悠が玲を心から慕っているから。
玲が喋るだけで、まるで歌でも聞いているかのような明るい気持ちになる。
「これからも歌ってくれませんか?」
唐突に悠がそんなことを呟くと玲は首を傾げた。
「ん?歌う?歌ったことなんてないだろ?あ、みんなでカラオケ行きたいとか?仕事詰めすぎなんだよな、息抜きか?」
「いえいえ、俺のためだけに歌ってください」
悠の言葉に玲は更に首を傾げた。この言葉の真意はきっと玲にはわからない。それでも、悠はかまわなかった。
「玲の歌なら、いくらでも聴いていられそうですよ」
たとえ暗いことも嫌なことも、愛しい者の声ならば、きっと全て昇華してしまえる。そんな気がしてくるのだと、悠は微笑む。
「訳わかんねーけど……まぁ、悠がそう言うならたまに歌うよ」
玲の言葉に悠は笑いながら頷いた。それはとても幸せな時間だった。
自分は王様でもない、騎士でもない。ただの魔法使い。
姫に笑顔の魔法をかける、特別な役回り。
そんな姫から、とびっきりの褒美をもらう……
悠にとってはそれで充分だった。
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