響く声とその主

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 その声に反応して玲も立ち上がる。 「呼ばれてるから行くわ。じゃあな」  引き止めることもできず、悠はその後ろ姿を目で追う。  玲の両隣にはいつも二人。決まった相手がいる。  一人は、とても優秀で全てにおいて頂点を獲るにふさわしい王様みたいな男。  もう一人は、特別な力はなくとも常に周りが見えていて、厳しくも優しく包み込むような騎士みたいな男。  その後ろに控える、何の特徴もない自分。  ただ、少し他より頭がいいだけの、面白味もない男。  悠は、玲が行ってしまった方向に顔を向けたまま、ため息を吐いた。 ***  翌日も悠は研究に没頭していた。彼にとって研究は自分の力を発揮できる場であり、誰にも邪魔されない自分だけの時間だ。  没頭しすぎて時間の経過に気付けず、ふと時計を見るともう昼を過ぎていた。悠は空腹を感じて手を止める。そしてパソコンをシャットダウンして立ち上がった。 「あれ?おまえまだここに居たのか?」  不意に聞こえた声に悠は驚いたが、すぐに表情を戻す。玲が部屋の扉に手をかけて、そこに立っていた。 「はい、少し熱中してしまいまして……何か御用でしょうか」 「いや別に用事はないけど……飯でもどう?」  玲の手には紙袋。その中にはパンがいくつか入っていた。 「これは……」 「おまえ、昨日から何も食べてないだろ?そんなんじゃ倒れちまう」  悠は差し出された紙袋を受け取った。そして中を覗き込むと、そこにはサンドイッチが2つ。一つはカツサンドで、もう一つはたまごサンドだった。どちらも美味しそうだ。 「……ありがとうございます」 「おう!あ、飲み物も買ってあるから心配すんな」  玲はそう言って笑った。その笑顔に悠の心が温まる。 「こんなにもよくしていただき、俺は幸せものですね」
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