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その二人の前では感情を剥き出しにする玲に悠は胸が締め付けられる。
自分には決して見せない姿。やはり同じ土俵には立てないのかと、悠は自嘲した。
「もういい!」
玲の大きな声が響く。その後の足音からその場を離れたのだと悠は推測できた。こうなっては、王様と騎士は動けない。今近づいたところで火に油だろう。
ならば、自分の役目かと悠は何食わぬ顔で部屋の扉を開けて、王様と騎士の二人と顔を見合わせる。
「わりぃ……」
いつもはふてぶてしいのに気まずそうな王様の声。その横で肩をすくめる騎士。何故二人のフォローを自分がしなければと悠は思ったが、玲のためならと、作り笑いを浮かべた。
「いいえ、お気になさらず。それより……玲は最近何かありましたか?」
悠の問に二人は顔を見合わせると少し言いづらそうに口を開いた。
「……いや、特に変わったことはない」
「そうですか……」
「ただ、少し気になることはある」
騎士の言葉に悠は身を乗り出す。その勢いに騎士は少し驚いたようだったがすぐに話を続けた。
「最近の玲はどこか上の空で……何かを考え込んでるみたいだ」
二人にもわからないのかと悠は思った。同時に、そんなに隠し通す玲の信念に感服する。しかしどこかで吐き出さなければ、いずれパンクする。悠は玲の向かった先へ歩み出した。
「ここにいましたか、我が女王陛下」
いつもの原っぱ。玲と悠の二人だけの場所。そこに座り込む玲の隣で、悠も地面に腰を下ろした。
「なんだよ」
「貴女が心配なのでつい」
悠の言葉に玲はそっぽを向く。しかしそんな姿が可愛らしくて、愛おしかった。こんな姿を自分に見せてくれることが嬉しかったから……だから悠は少し意地悪をしたくなったのかもしれない。
「何をそんなに悩んでおいでですか?」
「……おまえには関係ないだろ」
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