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素っ気なく返す玲に、それでも悠は続けた。ここで引くわけにはいかないのだ。
「関係ありますよ」
そう言って玲の片手をとり、その手の甲に口付ける。玲が驚いてこちらを見るのを感じながら、悠は優しく微笑んだ。
「貴女は俺の大切なお姫様です」
その言葉に玲の顔が真っ赤になる。しかしそれを誤魔化すように早口で捲し立てた。
「な、何言ってんだよ!?てか姫って言うな!」
「何を恐れているのです?」
悠のその言葉は今までのような冗談混じりの声色ではなく、真剣なもの。
「王様も騎士様も貴女を大切に思っているが故の、あの行動。それくらい玲ならわかっているでしょうに」
「……だから、だよ。これ以上情けない姿見せたら、余計に心配かける」
玲の言葉に悠は目を細める。ああ、本当にこの人は……
「それでも、本音を出してぶつかるべきですよ。少なくともあの二人は、貴女の全てを受け止められる度量があります」
「……そう、か?」
玲の顔が不安そうに歪む。その哀しそうな声が悠の脳に響く。暗いものなのに、心を鷲掴みにされるほどの威力。
「ええ、あの二人は貴女のことを心から大切だと想っている」
悠がそう言って玲の髪を撫でると、玲はそれを受け入れる。それすらも愛おしいと悠は息を呑んだ。
「……ん、わかった」
素直に頷く玲を抱き締めたくなる衝動を抑え、代わりに手を握る力を強めた。そしてゆっくりと立ち上がりながら言う。
「さて……では戻りましょう。王様や騎士様が心配していますよ」
そう声をかければ、玲は暗い表情を消していつもの顔に戻る。そうして、自分の足で歩いていく。
その後姿を見て、悠は思った。
自分は所詮、玲の隣に立てる存在ではない。
王様も騎士も彼女の隣には優れたカードが揃ってる。
自分など、魔法使いのような立ち位置だ。
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