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* * *
「もー、分かんない!」
フローリングの上には、アルミパイプが散乱していた。学校から帰ると、家の前に段ボール箱が届けられていた。ベッドの台座だ。室内に運び、組立を開始。
今日こそベッドの上で寝られる。最初は心が躍ったが、組立てが終わらず苛立ちが募ってきた。
「節約しなきゃよかった」
この手の作業は苦手だ。説明書の通りに作っているつもりなのに、別のパーツ同士を繋いでしまう。
「もう、抜けない!!」
両足で組み上がったフレームを固定し、誤って嵌めてしまったパイプを抜こうとする。思いっきり力を込めると、ポンと音がして勢いよく抜けた。
「あっ!!」
叫んだ時には遅かった。私はパイプを壁に突き立てていた。
「やばっ! これは弁償ものだ」
私はパイプをゆっくりと引き抜いた。
「何、これ……」
その瞬間、自分の不器用さを呪うこととなった。抜いたパイプの先には、赤い塗料が付いていた……。
* * *
寝床はベッドが一番。
私はその日、早めに寝ることにした。
壁は……見て見ぬふりをした。穴はガムテープで塞いだ。
――あれは、壁の向こうにある鉄筋の錆。そうに決まってる。
そんな理屈で自分を納得させた。すぐには寝付けなかったが、いつの間にか眠っていた。
目が覚めて、スマホを確認すると深夜2時だった。あと5時間も寝られると思い、目を閉じるが寝付けない。
起き上がり一度、伸びをした。
常夜灯ですら明るく感じた。真っ暗にしようか……そう思ったとき、ガムテープを貼った壁がぼんやりと浮かび上がった。
――このままじゃやっぱ、まずいよね。
気になって仕方がなくなった。
私はリモコンで電灯をオンにし、四つん這いで壁に近づいた。
ホームセンターで売ってる補修キットで直せるかな。
ガムテープに手を伸ばした。どうしても、穴の大きさを確かめてみたくなったのだ。
ビリッと勢いよく剥がす。
やめておけばよかった。
ガムテープと一緒に壁紙が剥がれた。その下には、明らかに別の色……真っ赤な壁が露出した。
「ヒ、ヒィ!」
見えない手で心臓がギュっと握られたような衝撃。私は尻もちをついて、後ずさりした。
「こんなの、あり得ない」
突然、どこからか「ピシッ」と、ムチで打つような鋭い音が響いた。
「やだ、家鳴り!?」
古い建物だ。温度変化などで異音がしても不思議ではない。
直後、建物が左右に揺れた。
「地震!!」
家鳴りは予兆だったのか。横揺れが強くなる。直後、玄関の外で重たい物が倒れる音がした。
「キャアーーー」
両手を耳に当てて音を遮断する。揺れが収まったかと思うと突然、室内の電灯が消えた。
――えっ! 今度は停電!!
とにかく外へ出よう。建物が崩れて下敷きなんてまっぴらだ。
スマホのライトで足元を照らして玄関まで移動した。チェーンを外して開錠する。
――あっ、開かない!!
ノブを降ろしてドアを押すが、1ミリも動かない。強い力で押さえつけられているようだ。
のぞき穴から確認すると、何かがドアを塞いでいた。
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