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歌う事。
これは音楽の基本中の基本だと、音大時代の師匠に言われた事でもある。
楽曲を練習している時に、どうしても弾けない旋律があったら、まず歌ってみる事。歌う事で、フレーズを身体に覚えさせるというのが目的らしい。
その後に、自分が楽曲をどう解釈し、弾きたいのか、といった音の表現について考える。
ピアノ曲のCDを耳を澄ませて聴くと、ピアニストがフレーズを歌いながら弾いている音源もあったりする。
歌う事。これはピアノに限らず、だ。
先日、親友の結婚式に出席した後、吹奏楽で有名な藤森学園高校吹奏楽部OBの方と話す機会があったが、部活の練習に合唱を取り入れている、という話を聞いた。
歌う事で自分が今どの役割を担っているのか。
旋律なのか、対旋律なのか、ハーモニーなどの伴奏なのか、音楽を支える低音部分なのか。
それを認識するために、吹奏楽の練習の合間に合唱の練習をするという。
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歌う事に関して、色々な考えを巡らせているうちに、レッスン終了時刻が近付いてきた。
「はるかちゃん。右手も左手も両方歌えるようになったら、きっと最後まで止まらずにピアノを弾き切る事ができると思うから、おうちでの練習も歌ってみてね。お母様も、お時間がある時に、はるかちゃんと一緒に歌ってみるのも良いかもしれません」
「わかりました。歌は下手ですが、はるかと一緒に歌ってみようと思います」
レッスン終了時刻になり、はるかちゃんとお母さんは、『ありがとうございました』と挨拶をして、帰宅していった。
(来週のレッスンはどうなってるかな……)
歌う事で、何かきっかけが掴められればいいけど、と思いつつ、私は部屋を後にした。
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