6人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
1
ピピピ、と軽やかな機械音を片手で消した。
カーテンを開けると見慣れた朝日が差し込んでくる。今回の部屋は三階だが、周囲には芝生広場が広がっており日当たりがいい。いくつか立っている低木も空からの光を遮ることはない。
当たり、ってやつかな。
顔を洗ってコーヒーを入れる。朝食を済ませてベランダの掃除をした。引っ越したばかりの部屋だ。できるだけ綺麗に保ちたい。
スーツに着替え、バッグを持って玄関の扉を開ける。
マンションの廊下に出ると、ちょうど同じタイミングで隣の部屋の扉が開いた。
「よ」
「げ」
僕を見つけた瞬間、スーツ姿の三葉は眉間に皺を寄せた。向こうも出勤のタイミングだったようだ。
「え、また隣に引っ越してきたの!?」
「うん。よろしくね、お隣さん」
僕がにっこり笑って告げると、三葉はわかりやすくため息をついた。
「ちょっともう何回目よ。なんで私が引っ越したらすぐ隣に引っ越してくるの」
「たまたま隣が空いてたからね」
「神様は悪戯好きね。てかそれ理由になってないから」
「三葉のことが大好きなんだよ」
「ジョークでしょ」
「さすが幼馴染」
二人でエレベーターに乗り込んで一階のボタンを押す。前のマンションと同じ種類のエレベーターなので使い方は問題ない。
最初のコメントを投稿しよう!