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「大好きな場所って、近くに安いスーパーがあるとか?」
「まあそれも大事ね。最近いろいろ値上げしてるから」
「ところでトマトって今いくら?」
僕が尋ねると、彼女はスーパーの袋を持ち上げた。
「さっき行ったとこは1個177円」
「213個で?」
「え、なにその計算問題」
自室の前に着いた三葉はこちらを向いた。
彼女の部屋の扉には、ポストに貼っていたものと同じミツバチのシールが貼られている。
自由に引っ越せるよう『箱』には部屋番号がついていないので自分の部屋を見分ける目印をつけなければいけないのだ。
「いや、計算してないだろうから教えてやろうと思って」
「ん?」
三葉は首をかしげる。僕は何も言わず自室の扉にカギを刺した。
僕の部屋の扉には目印はついていない。必要なかった。
ミツバチの隣が僕の部屋だ。
「で、いくら?」
「え、えーと──」
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