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引越し業務
職場の部署の配置換えを行うようで朝からドカンバタンと騒がしい。
わたし、新山千春は入社して4年が経つ。
現在の局で働いてる、1年に1回は配置換え、いわゆる引越しを行う。
「わたしの席は…っと」
「チャオ、チハルん。隣だねぇ」
「ぐ…」
わたしは心の中で朝から勘弁してくれ、と思った。
「チハルん、1年間ヨロシク〜!あ、1年以上になるかもしれないがね~☆」
秋山翔太。わたしの2年先輩の、今はチームリーダーをやっている。
顔はイケメンで女子にモテるのだが、チャラい言動とナルシスト加減がありわたしは得意では無い。
「(なるようになるか…ま、気にしない事にしよ)」
「秋山リーダー、1年間よろしくお願いします」
ペコりとわたしは頭を下げた。
「うーん、チハルん少し硬いね~。もっとフランクにいこうよ、例えば~俺の事を翔先輩とかさ☆」
「わたし、元々考え方も硬いようなので、すみません」
「いやいや、そういう事じゃなくてね〜」
「翔~、そんぐらいにしなさいよ」
秋山リーダーの首根っこ捕まえるように、背後から声の主が現れた。
わたしにとっても救いの主だわ。
「なんだ~、ハルちゃん、かまって欲しくてきたの?☆」
前田春奈。秋山翔太リーダーと同期入社で別の部署のリーダーをやっている。
秋山リーダーとは所謂戦友であり仲間である。
「翔は女の子なら誰でもいいのかな?」
「まっさかー☆俺が欲しいのはハルちゃんのココロだけさ☆」
(う、寒気がする…)
「うん、いつから君はルパンになったのかな?」
(なるほど、カリオストロの城だ!)
「俺がルパンならハルちゃんは不二子ちゃんってことかな??罪な男だよ俺も」
「わたしは銭形のとっつぁんかな、罪な男として現行犯逮捕する」
「え?!」
「さぁさぁ引越し終わって女子に声掛ける暇があるならさっさと仕事する!行くよ!」
「あーれー、お助け~」
前田リーダーは秋山リーダーを引っ張ってって遠くへ行った。
(忙しいやっちゃな)
「チーちゃん先輩!」
ふいに声をかけられる。
「お?」
声の主は1年後輩社員の、高橋めぐるだ。
因みにわたしの愛称で、チーちゃん先輩と言っているのはこの高橋だけだ。
(可愛いから許してるんだがな)
「めぐ、引越し終わった?」
「それが~まだなんですよ〜。お腹もカラータイマーで…」
(お腹は普通のタイマーじゃないのか?)
「わかってたよ、めぐ、お昼一緒に食べる?」
「わーい!じゃあ今日はめぐの好きな家系ラーメン行きましょ!」
(そう、見た目によらずがっつりこってり系のラーメンが好きなのだ!!)
「うん、じゃあテキトーにラーメン食いいく人声掛けとくわ」
「よろしくお願いします~」
引越し作業を始めて2時間たった。
まだ終わりそうもない。
喉が渇いたので自販機でアクエリ買おう。
すると先に先客がいた。
「お、新山じゃん。」
「よ!影山」
影山弘樹。わたしの同期入社で結構話せる男友達。
「新山引越し作業終わった?」
「まだまだかかりそうだよ、腰がいて〜」
わたしはカカカと笑った。
「体力使うし力仕事だもんな。俺この間フットサルで変な転び方しちゃって腰にコルセット入ってんの」
「マジ!?大丈夫?」
「ああ、今はまぁ大丈夫かな。」
「そう。あんまり無理しないようにね」
「ありがとな、てか女子に力仕事を心配される男子って逆だろ!」
そういって影山はワハハと笑った。
「あ、そういやさ、影山はラーメン食う?」
先程の高橋めぐるの話を思い出して影山に聞いた。
「ラーメンか」
「そう、ラーメン」
1回影山は思案したあと、行く、と答えた。
「なんで即答じゃなかった?まぁ理由は別にいいけどさ」
「あー…俺さ、最近太ったんだわ」
「はあ?全然わからんぞ?」
「いや、まぁ今は腹減っこませてるが割とヤバいんだ」
「全然大丈夫だけど、まぁわたしも夜中にチョコとか食べてるからな、太ってるかもな」
「新山もあんま変わらんぞ?」
「そういうもんだよ、気にしたら負け」
「あんま心配にならんのだな新山は」
「そうそう、わたしは能天気だからさ」
ワハハとわたしは笑った。
「そういうもんか」
てことで1名確保。
あとは影山から後輩テキトーに1人呼んで、と伝えておいた。
引越しは大変だなぁ…。
続く
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