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そして右足で廊下に踏み入れたが、左足の先はまだ靴にささったままだ。
それでいてこの匂い。一体何が臭うのか。廊下の壁際に置かれたビニール袋は、ゴミやら何やらがたくさん詰まっているだけでなく、中には何匹かの小バエが袋の中で行き交っているものもあった。
「おーい、こっちだ」
松阪の声で我に返り、有井は勇気を出して左足も廊下に踏み入れた。廊下の右側は、一応床面が残っている。ゴミが散乱しているというわけでもない。大丈夫、単にマンションの集積場所に出しそびれたゴミ袋が、置かれたままになっているだけだ。そう思い込むようにして、有井は一歩、さらにもう一歩と、廊下を進んで行った。
(続く)
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