(三)

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 有井はその笑い声ですっかり安心して立ち上がると、続けてクローゼットの右側のもう半分を開けた。  するとそこには、大人の女性が床に座らされていた。片方の手は乳母車に掛けられていた。うつむいた顔からは、二つの球体のような物が糸のような何かで吊られて座った太もも近くにぶら下がって落ちようとしていた。多くのハエがたかり、小刻みに動きながらそこから飛び立とうとはしていなかった。そして昨日と今朝まいた殺虫剤の匂いも打ち消すほど酷い匂いを放っていた。  それがなんであるかに気づいたとき、有井はその場で意識を失った。 (続く)
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