(一)

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 ハンドルを握りながら藤並が答えた。 「客の立ち会いがないので気楽ではあるけど、1LDKの部屋では手際よく作業しないと時間食うからな。有井が来てくれて助かるよ」 「立ち会いなしなのか」  続けた藤並に松阪が聞き返す。そして「普通、貴重品なんかもあるから立ち会いをこっちからお願いはするのに」と加えた。 「ま、とりあえず、現場にいけばわかるさ」  藤並の言葉に、松阪は「そうだな」と応えた。有井も同感だった。  三人を乗せた引越屋のトラックは、明治通りへ入る交差点を抜けて、地下鉄南北線の駅の地上出口をたどるように南下していった。 (続く)
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