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そんなこんなでまお子達は高校に到着し、それぞれのクラスに向かう為別れた。まお子と楓は五組、司は一組だった。
「…ハルトさんの話だけどさー」
司と別れてクラスに向かう途中、楓が少し頬を赤らめながら言った。
「実はイケメンだって思ってたんだよね」
「え、楓。ハルトの顔がタイプなの?」
驚くまお子。まお子からすると、ラインハルトは元々敵同士で自分を1000年も封印した男だ。その間、心を入れ替える前の自分は憎んだり恨んだりとラインハルトの顔を忘れた事は無かったが、今更あの男の美醜について考えた事は無かった。
「いやいや、タイプと言うか…誰が見てもイケメンでしょ、あの顔面は!」
そうなのかぁ、と、まお子は驚きつつも一般的にラインハルトがイケメンの部類である事を初めて知った。
しかし、まお子にとって一番素敵だと思う人物は他にいる。それは司と同じクラスに在籍する学年一位の男子生徒だった。そう、まお子は恋をしているのだ。なにせ彼女は花の17歳。恋に勉強に大忙しなJKなのだ!
「それに私、彼氏いるしね」
「あ、歳上の?」
まお子が尋ねると楓は照れたように頷く。楓には大学生の彼氏がいた。まお子は写真でしか見た事はないが、お洒落で大人っぽく、格好良い彼氏だ。
まお子達のクラスに到着したことで楓とのこの会話は終了となり、二人はクラスの友人達と朝の挨拶を交わしたのだった。
楓と司と共にお昼休みを過ごしラインハルトが届けてくれた愛子特製のお弁当を食べて、まお子が午後最後の授業である数学の授業を受けている時、彼女は大変な事に気付いた。
(…ハッ! 今日の日付け…私の出席番号だ!)
この数学の先生は授業の最後に割と難問を出し、生徒を指名して解かせるという生徒にしてみれば嫌な癖を持つ先生なのだ。そして、その指名する基準として今までの傾向的に日付けが使われ易い…まお子のピンチであった。
(どうしよう…絶対に解けるわけないよ。でもクラスの皆の前で恥はかきたくない! こうなったら…やむを得ない…!)
——ラインハルトは愛子と共にスーパーの買い物袋を抱えてちょうど角田家に到着したところだった。
「ハルト君が居てくれて助かったわ」
二人だからまとめ買いが出来たと喜ぶ愛子にお礼を言われてラインハルトは照れ臭く思いながらも役立てたことに嬉しく思っていた。
スーパーへの道順はしっかり覚えた、あとはこちらの世界の文字を覚えられたらラインハルトも一人で買い出しに行くことが出来るだろう。
異世界転移特典なのか、ラインハルトは初めからこちらの世界の言語を聞き取り話せるが、読んだり書くことは出来なかった。
「まお子ちゃんがあと二時間くらいで帰ってくるだろうから、それまでハルト君は休憩しててね」
愛子に休憩を言い渡された時だった。
「!?」
ラインハルトは険しい顔付きで顔を上げる。
(…今、確かに感じた。邪悪な闇魔法の気配を…!)
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