弐 同棲(?)しちゃった

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「せ、先生!」 「どうした角田?」  まお子が元気よく手を上げると、解説中の先生が振り返り尋ねてきた。 「せ、咳が…ぶふぉ、ぶふぉっ、止まらないので保健室に行ってきてもいいですか!?」 「あ、あぁ…行ってこい。付き添いが必要か?」 「一人で大丈夫です!」  まお子は聖剣に触れないように勢いよく立ち上がると、周りに認識されていないラインハルトの腕を掴んで慌てて教室から飛び出した。  向かう先は保健室…ではなく、人気のない渡り廊下へと向かう。 「なんでハルトが学校にいるの!?」 「転移魔法で飛んできたんだ」  まお子の質問に答えた後に、それより、とラインハルトは本題を切り出す。 「闇魔法を使って一体、どんな悪さをしたんだ?」  そう詰め寄ると、途端にまお子はバツの悪そうな顔でうぅ…と小さく唸った。ラインハルトはまお子が罪の意識を感じている様子を見て、何かしでかしたのだと確信する。 「この世界も地獄に落とすつもりか!」 「えぇ!?」  まお子は驚愕した。一瞬、ラインハルトが何を言っているのか理解出来なかったが、自分が闇魔法を使った事でこの勇者に前世と同じような世界制服を目論んでいると勘違いされているのだとすぐに気付いた。 「そんな事しないよ! 私、魔王じゃないし」 「魔王だろ」 「元ね!」  まお子は仕方なく闇魔法を使って教師を洗脳したことを白状した。難問が解答出来そうにないので、名指しされる危機を回避する為に仕方なかったのだと…話していてまお子は自分の小物感に情け無くなった。 「………そうか」  経緯を聞いたラインハルトは怒りの矛を収め、複雑そうな表情で神妙に頷く。 「つまり、お前は人類の滅亡などを企んでいるわけではないと…」 「だから昨日からそう言ってるでしょ。私、人間に転生する時、女神様に改心するって約束したんだよ」 「………」  まだ疑いの目を向けるラインハルトに、まお子はうんざりする。  しかし、それも仕方ない事なのだ。まお子の前世である魔王を封印した後、ラインハルトは先読みの魔法で将来魔王が自分の封印から逃れる事実と、また人類が魔王に脅かされている未来を知ってしまった。だからこそ、ラインハルトは今度こそ魔王を命を賭してでも封印しようとそのまま彼女を追いかけて異世界に渡ってきた。  まお子からすれば1000年と17年前の話なのだが、ラインハルトからすれば、つい先日まで魔王と死に物狂いの戦争をしていたのだ。そう簡単に頭を切り替えられる筈もなかった。
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