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序章 出会っちゃった
「今日、カラオケ行かん?」
学校帰り、女子高生三人組のとある会話。
「おー、いいねぇ。久しぶりに私の美声を聞かせてやりますかぁ!」
「音痴が調子乗んなっての」
真ん中にいる元気そうなJKがおちゃらけた様子で言うと、左隣にいる金髪の三白眼のJKが肘でつつきながらツッコミを入れた。
「二人とも、もうすぐテスト始まるけど大丈夫?」
すると右隣の大人しそうなJKが心配そうな顔で二人に言った。
「私たちには『学年三位』様がいるから大丈夫だもーん」
「もう、私を頼ってばっかじゃダメだよ?」
ぷんぷんと怒ってみせる大人しそうなJKだが、満更でもない様子。
三人は同じ町内に住む幼馴染の三人組だった。小学校から高校までずっと一緒で、幼馴染でもあり親友でもある。三人は笑い合いながら、今日も楽しく帰宅していると…。
「見つけたぞ、魔王!」
三人の前にとある一人の男が現れた。三人が驚いて彼を見れば、その男はファンタジーゲームに出てきそうな…まるで勇者のような格好をしているではないか。
「まお…? まお子、呼ばれてるけど…あんたの知り合い?」
まお子と呼ばれた真ん中のJKが、左隣のJKを青褪めた顔で見る。
「司、全然知り合いじゃないよ…」
まお子の返答を聞いた司の三白眼が、再び目の前の男に向けられた。
「…コスプレイヤー?」
「えっ、ここの近くで何かイベントってあったっけ…?」
と、右隣のJKが戸惑いながら呟くと、二人は首を横に振った。
「また楓のファンじゃなくて?」
「やめて。いくら私が特殊な趣味を持ったオタクに好かれ易いからって…」
そんな事を三人で話していると、男は険しい顔付きでツカツカと大股で近付いてきて、突然まお子の腕を強引に掴む。
「捕まえた! もう絶対に逃さないからな!」
まお子は驚愕した表情で目の前の男を見上げた。目の前の男は…日本人離れした綺麗な顔立ちで、目は青くイケメンだ。両隣にいる司と楓が思わず頬を染める程に…。
「まお子の彼氏?」
「わぉ、熱烈な告白!」
揶揄い始める幼馴染たちに、まお子は「ちがう!」と吠えるように否定する。改めて目の前の男を見上げて、困ったなぁ…と思った。
(この男、ここまで追いかけてきたの…!?)
まお子には、この目の前のイケメンにかなりの心当たりがあった。この男の正体は、よーく知っている…。
何故ならこの男は正真正銘の勇者であり、自分はそんな彼と何度も死闘を繰り広げてきた魔王だったからだ。
角田まお子、17歳。
彼女の前世は異世界を阿鼻叫喚に陥れた最凶魔王だった。
—序章 出会っちゃった・終—
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