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まお子が司と楓と共に学校の校門に向かうと、そこにはちゃんとラインハルトが言い付け通りまお子の事を待っていた。
下校する生徒たちが勇者の姿をしたラインハルトに注目しており、中には笑いながらスマホで写真を撮ろうとする者もいる。
「お兄さん、それ何のコスプレ? 一緒に写真撮ってよー!」
ラインハルト、高校生に大人気である。その中でも女子生徒の割合が多く、ちょっとしたラインハルトフィーバーであった。
「ハルト、お待たせー!」
そんな中、まお子はマイペースにラインハルトへ手を振りながら駆け寄った。ラインハルトの周りに集まっていた生徒たちがまお子を振り返る。
「あの大勢の中に飛び込める精神力、すごいわ…」
「まお子ちゃんだもんねぇ」
感心したような司と、納得したように頷く楓がまお子の後ろ姿を見つめながら何やら呟いていた。
「そこまで待っていない」
ムスッとした顔で答えるラインハルトに、まお子は「ハルト、人気者じゃーん!」と揶揄うように言う。するとラインハルトの表情はますます不機嫌なものへと変わっていった。
「さっきから俺の周りに集まってくるんだ。なぜだ?」
「ハルトと一緒にスマホで撮りたいんだってー」
まお子の返答に、ラインハルトは顰めた顔のまま小首を傾げて「すまほ?」と聞いた事のない単語を復唱する。
「角田さんの知り合い?」
すると横から声をかけられたまお子。見ると、その声の主は同じクラスの戸田だった。今日、まお子のせいで不幸を被った…。どうやら戸田も人集りの中にいたようだ。
「あー、うん。私の遠い親戚なんだー」
深く突っ込まれたくないまお子は言葉を濁しつつ、ラインハルトの腕を掴んで逃げるように人集りの輪から抜け出そうと歩き始める。
「司、楓。また明日ー!」
「おー」
「また明日ね、まお子ちゃん」
去り際に友人二人に別れの挨拶をしてから、まお子はラインハルトと共にこの場を後にしたのだった。
「おい。いつまで掴んでいるつもりだ」
ずっと自分の腕を掴んで歩くまお子にラインハルトは不満げな表情で言った。
「あ! ごめん、ごめん」
まお子はからっとした笑顔で謝った後、自身のスマホに今しがた届いた通知を見て呟く。
「あれ、ママからメッセージだ……ハルトが家に居ないって騒いでるよ」
スマホ画面から顔を上げてラインハルトを見ると、彼は気まずそうな表情を浮かべていた。
「…何も言わずに出てきてしまった」
「ママ、心配してるから帰ったら謝ろう。とりあえず、私からハルトと一緒にいるって伝えておくね」
まお子はそう言いつつ、フリック機能を使いながら素早くメッセージを打ち込むと愛子に送信する。ラインハルトは不思議そうにまお子の手の中のスマホを見つめていた。
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