弐 同棲(?)しちゃった

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「まあまあ…落ち着いて座ってよ」  注目されてるからさ、と宥めてくるまお子に着席を促され、流石のラインハルトも周りの目を気にしたのか大人しく再び着席する。 「さっそくだけど、この世界の常識を伝えておくね」  今日の寄り道の本来の目的を果たすため、まお子は気を取り直して本題に入った。するとラインハルトも頷き、聞く体勢に入る。 「この世界にはね、魔族が存在しない」 「まぁ…それは何となく察知していた」  この二日間、ラインハルトも角田家で出来る限りの情報収集を行っていた。それに一番貢献してくれたのは『テレビ』だ。テレビに映る『ニュース番組』を熱心に観ていたラインハルトは、誰も一言も魔族の事に言及する者はいなかったので、この世界で魔族は滅びているのではないかと考えていたのだ。  それにしても、テレビを初めて目にした時は本当に驚いた。小人族が囚われて奴隷のように酷使されているのかと目を疑ったが、どうやらそうではないようだった。  原理は分からないが、人間たちの記録が映像化されそれを投影しているのだろうと思う。とても高度な魔法だとラインハルトは心の底から感心していた。 「そして魔法も存在しません」 「? 魔法なくしてどうやって生活するんだ?」  もうラインハルトの頭の中は宇宙が広がっていた。ラインハルトの世界での常識は、魔法で全てが成り立っている。生活する時、外敵から身を守る時…便利なだけでなく、命に直結するほどに必要不可欠な能力だ。だからこそ、魔法が得意な者ほど出世する。  だからラインハルトは、まお子が転生したこの世界の不思議なものは全て、自分の知らない高度な魔法で成り立っているものだと捉えていた。 「…て、てれびは? あれが魔法じゃなければ何なんだ? くるまだって…あの鉄の塊が魔法じゃなければどうやってあんなに早く動くんだ!?」  ラインハルトは混乱していた。 「この世界には魔法がない代わりに『科学』が発展しています」  まお子は眼鏡なんてかけてないくせに、掛け直す仕草をしながら説明口調でこの世に普及している科学について教えてあげた。ラインハルトは混乱しながらも真剣な表情でまお子の話に耳を傾けていた。 「…つまり、俺たち以外の人間は魔法が使えない…いや、そもそも魔法の概念は空想上のものでしか捉われておらず、存在しないものとされている…」  まお子の話を聞き終えて、ラインハルトは頭の中の整理をするように呟いていた。そこで、はて、と疑問が思い浮かぶ。 「魔王。今日お前は普通に闇魔法使ったよな?」  何故だ? と、尋ねてくるラインハルトにまお子は困ったように笑って答える。 「分かんない…元魔王だからかな。この角にエネルギーを蓄えておくと、簡単な魔法なら使えるんだよね」  ラインハルトの視線が、まお子の頭に生えている黒くて艶のある光沢を見せる二本の角に向けられた。 「…そうなるとこちらの世界の(ことわり)とお前は矛盾しているようだが…」
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