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スーパーの従業員達に呼び止められながらも、いつもより時間を要して愛子に頼まれた品を購入した二人。
「やっと帰れるよ…」
スーパーの外に出ると、まお子が疲れた様子で呟いた。
「それにしても…ハルトはすごいねぇ」
「なにがだ?」
早く行くぞ、と言いたげな仕草でこちらを振り返りラインハルトは尋ねる。
「すぐ皆と仲良くなっちゃうから…それも勇者の資質に必要なものなの?」
まお子が揶揄うように笑うと、ラインハルトはムスッとした顔をしているが耳が少し赤くなっていた。
「さぁな。それよりも早く帰ろう」
「あ、待ってよー」
照れ隠しなのか、スタスタと先に行ってしまうラインハルトを追いかけて、まお子は走ったのだった。
するとラインハルトが突然足を止めたので、まお子は彼の背中にぶつかってしまう。
「わぷっ…急に止まんないでよぉ」
ジト目で彼の横顔を覗き込むまお子に、ラインハルトはとある所を指差した。
「あれ…カエデじゃないか?」
「え?」
言われて指の差した方へと目を向けると、確かにそこには楓の姿が。制服から着替えて私服なので、楓は一度帰宅した後らしい。
「本当だ! …隣の男の人、彼氏かな?」
楓の隣にはまお子の知らない若い男性が一緒に歩いていた。遊び慣れたような派手な出立ちで、清楚な楓と並んで歩いているとどこかアンバランスさを感じる…二人はそんなカップルだった。
まお子は車道を挟んで向こう側を歩く楓達を目で追った。隣の男はやはり前に楓に写真で見せて貰った彼氏とよく似た人で…あの時の楓は嬉しそうに照れながら写真を見せてきてくれたけど、今の楓は恋人と過ごしているというのにちっとも嬉しそうには見えない。むしろ、嫌がっている様子だ。
「…ハルト。楓を追いかけていい?」
今日、教室で様子のおかしかった楓が脳裏によぎったまお子は真剣な顔でラインハルトに尋ねると、彼も何かを感じとったのか「好きにしろ」とだけ答えたのだった。
「だからさぁ、楓。俺の友達にお前を紹介させてよ」
「陽君、前にも言ったけど…私、そういうのは…」
楓は震える手をギュッともう片方の手で握って、恋人である陽介に怯えながらも笑顔を浮かべていた。
色の付いたサングラスの向こうで陽介の目が鋭くなる。
「…逃げられると思ってる?」
「………」
楓はぎこちなかった笑顔を消して、泣きそうな顔で俯いて視線を泳がせた。
「コレがある限り、お前は…」
「楓!」
陽介が自身のスマホを顔の横でフリフリと左右に振りながらニヤリと笑っていたところ、ラインハルトと共に彼らに追い付いたまお子が声をかけてきた。楓と陽介が振り返る。
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