参 魔王でちゃった

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「楓、やっほー!」  まお子は明るい笑顔を浮かべて楓の元へと駆け寄った。 「…まお子ちゃん?」  楓はとても驚いていて、そんな彼女の腕に抱き付くようにまお子は腕を回すと「噂の彼氏?」と、揶揄うように笑った。 「………」  突然現れたまお子とラインハルト…概ね勇者ラインハルトを驚いたように見つめていた陽介は、気を取り直したように爽やかな笑顔を浮かべてニコッと笑う。 「楓のお友達?」 「う、うん…」  楓は戸惑いながら答える。まお子は元気よく「楓の親友のまお子です!」と陽介に笑いかけながら挨拶した。 「陽介です、はじめまして」  陽介が握手を求めて手を差し出してきたので、まお子はその手を掴み握手に応じる。すると、陽介は手を引いて強引にまお子を自身の元へ引き寄せてきた。 「楓みたいに可愛い子のお友達って、やっぱり可愛いんだねぇ」  まるで品定めするかのようにまお子を見る陽介の嫌な目付き。  突然引き寄せられてグッと顔を近付けてきた陽介にまお子は驚いて固まっていると、握手する陽介の腕をラインハルトが握った。 「痛っ…」  ラインハルトの握る力が余程強かったのか、陽介が顔を歪めてまお子の腕を離すと、二人の間にラインハルトが体を滑り込ませるように入ってきた。  まお子を背にして立ちはだかるラインハルト。まるで彼女を守る騎士のようである。 「まお子ちゃん、大丈夫!?」  解放されたまお子に楓が泣きそうな顔で縋り付き声を掛けてきた。陽介は反抗的な目でラインハルトを睨み付けるも、背も高く威圧感を放つラインハルトに恐れを成したのか、すぐにヘラヘラとした笑顔を浮かべて取り繕うように笑った。 「…彼氏さんを怒らせちゃったかな? ごめん、可愛い子の友達はやっぱり可愛いんだなぁって思っただけなんだ」  陽介の言い訳にラインハルトは冷たい目を向けたまま何も答えないものだから、陽介は居心地悪そうにしている。 「…そうだ。俺、この後行くところがあったんだ」  そして慌てたようにそのような事を言うと「じゃあな、楓」と楓に雑に別れの挨拶をして、この場から逃げるように去って行った陽介。  残された三人はそんな陽介の小さくなっていく背中を唖然とした表情で見つめていたのだった。 「…彼氏さん、行っちゃったねー…」  あはは、と苦笑いを浮かべてまお子が楓に目を向けると、彼女の目からぶわっと涙が溢れた。 「か、楓!?」  突然のことにまお子が慌てていると、楓は止まらない涙を拭いながら…いつもしっかり者の彼女にしては珍しい弱々しい表情で言ったのだ。 「…まお子ちゃん、私どうしたらいいんだろう…?」  楓は助けを求める目でまお子を見つめた。 「私、陽くん…彼氏に脅されてるの…」
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