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「…どういうこと?」
まお子は顔を顰めて楓に問い掛けるが、楓は涙が止まらないみたいで黙ったまま泣き続けている。
「魔王」
ラインハルトが複雑そうな顔で声をかけてきた。
「続きの話は帰ってから聞こう」
カエデも周りの目が気になるだろう、というラインハルトの気遣う言葉でまお子はやっと周りの通行人たち…特に男性に注目されていることに気付く。それもそうだ、清純派美少女JKが涙を流していたら何事かと思うのが人の心というやつだ。
そうだね…と呟きながら、泣き続ける楓に目を向けるまお子。
「楓、うちにおいでよ」
親友の辛そうな姿にまお子まで悲しくなってくる。彼女がそっと優しく楓の肩に手を置くと、楓は涙を流しながらと小さく頷くのだった。
まお子達が角田家へ到着する頃には楓の涙も収まっていた。しかし、彼女は終始暗い表情で俯いており何も話さないままだった。まお子と楓の二人だけで話せるように早々にまお子の自室へと向かおうと、リビングにいる愛子に楓の来客だけを伝えて二階への階段に向かう。
「ハルト君、お客様用のティーカップを取ってくれる?」
「はい!」
何やら楓の来客に合わせて、愛子とラインハルトがお茶の用意をしている間に二階へと上がり、まお子達は部屋へと入った。
「…まお子ちゃん、変な姿見せてごめんね」
「謝んないでよ! 友達が困ってたら、私だって助けたいって思うよ…楓のペースでいいから、何があったのか教えてくれる?」
楓をクッションの上に座らせながらまお子がそう言うと、楓は先ほどよりは落ち着いた表情で頷いていた。
「彼氏に脅されてるって…どういうことなの?」
まお子が改めて尋ねると、楓は暗い表情で奥歯を噛み締めるように口を一文字にしていたが、話すことに決めたのか口を開く。
「…実は…」
楓はポツリ、ポツリと自分の身に起きた事を語り始めたのだった。
「——つまり、彼氏…陽くんに体の関係を求められたけど、怖くなった楓が断ったから喧嘩になったと…」
楓の話を要約しながら、まお子は頭の中で整理していった。
「うん…」
力無く頷く楓を見て、まお子は顔を顰めて唸っていた。
未成年の楓に体の関係を求めて、同意を得られなかったから怒り出したという陽介に対し、まお子が嫌悪感を抱いてしまうことは仕方ないとして…だがしかし、仲良し三人組の中でも一番自立心の強い楓が彼氏と喧嘩した事くらいでこんなにも弱り果ててしまうものなのだろうか…。
まお子は直感的にただの喧嘩じゃないと悟っていた。
「…楓が言いたくないなら内容までは無理に聞かない」
まお子はグッと楓の細い両肩を掴んで真剣な顔付きで続ける。
「喧嘩だけじゃ、ないんでしょ?」
すると楓はまた再び涙を溢して頷いた。
「うん…その時、私…抵抗したんだけど…」
楓の続く言葉に、まお子は耳を疑う事になる。
「無理矢理に服を捲し上げられて…下着姿の写真を撮られたの…」
「…は…?」
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