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「せっかくひさしぶりに入ったというのに行けないのは非常に残念だ」
「へえ。
社長がそこまで仰るのなら一度、食べてみたいですね」
しかし社長でも滅多に食べられないようだし、僕のような庶民など一生縁がないだろう。
などと思っていたが。
「だろ?
ぜひ、行ってくるといい」
「へ?」
社長がなにを言っているのかわからず、まじまじとその顔を見ていた。
「私の権利を譲るよ。
本来は会員限定なんだが、私が紹介するから問題ない。
お世話になっている君に、あの素晴らしい肉を味わってもらいたいんだ」
力強く社長が頷く。
「お世話になってるなんて、そんな。
お世話になっているのは私のほうです」
「いいから、いいから。
店のほうには私から連絡を入れておくよ」
「ありがとうございます……!」
ここまでしてくれる社長には絶対に報わなければ。
そう、誓いを新たにした。
しかし、話しているあいだにも二リットルのペットボトルが二本空いており、糖尿病にしても飲み過ぎではないかと心配になった。
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