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仕事が終わり、社長から教えられた店へ行く。
ごく普通の……というとそこらの店よりも高級感があって語弊があるが、それでも人魚の肉を出しているというのに想像の範囲からは出ない店だった。
「あの。
紹介してもらった……」
「お待ちしておりました」
特段、なにも言われず席に案内される。
「本日は特別コースと承っておりますが、よろしいでしょうか」
「あっ、はい!
それでお願いします!」
「では、失礼いたします」
頼んだ飲み物が出てきて、コースが始まる。
オードブルはサーモンなどを使った当たり障りのないものだった。
とはいえ、いつも僕が食べている料理よりは何倍も高いのだが。
スープも、そのあとの魚料理も別に特に変わりはない。
〝人魚〟だから魚料理かもとは思っていたが、予想は外れたらしい。
口直しのソルベを食べながら、そわそわとメインの登場を待つ。
「メインの、人魚のシチューでございます」
僕の前に置かれたお皿の中身は、ごく普通のビーフシチューに見えた。
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