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どっぷりとスープに具材が入っているスタイルではなく、煮込んだ肉をメインにボイルした野菜が添えられ、ソースがかかっている。
……これが、人魚の肉。
逸る気持ちを抑え、フォークとナイフを手に取った。
肉にナイフを入れたが、まったく抵抗がない。
フォークだけでもいけそうだ。
顔の高さまで持ち上げた、フォークに刺した肉をしげしげと見つめる。
見た目は牛肉となんら変わらない。
人魚の肉とはたまに聞くA6ランクの牛肉なんだろうか。
知らず知らず、喉がごくりと音を立てる。
おそるおそるフォークを口に入れた瞬間、僕は思いっきり目を見開いていた。
「えっ、あ?」
牛肉とは違う、甘みが口いっぱいに広がる。
しかも肉は口に入れた途端、まるで綿飴のように消えていった。
「なんだ、これ?」
二口目はさっきよりも味わって食べた。
甘みのあとに塩味がきて、最期に一瞬、苦みで終わる。
複雑な味でこんな食べ物は今まで味わったことがない。
社長が夢中になるのも納得できた。
「ああ、美味しかった……」
名残惜しく、パンで皿に残ったソースを拭う。
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