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永遠に生きる
恋人が病にかかった。
風邪などすぐに治る病気ならいいが、あと数ヶ月の命だという。
だから俺は――友人を殺そうと決めた。
「ちょっと出掛けてくるな」
「いってらー」
軽い調子で彼が俺に手を振る。
穏やかな様子からは余命幾ばくもないなんて見えない。
しかし病はもの凄い速さで、彼を蝕んでいた。
昨日はひとりで立てたのに、今日は俺の支えがないと立てない。
もう、時間はいくらも残されていないのだと感じさせた。
「おおーい」
掲げたレジ袋を振り、暗い海へと声をかける。
まもなくしてぴちゃんと水音がしたかと思ったら、水面から男の顔が覗いた。
「ひさしぶりだね」
「そうだな」
すいすいと泳いできた彼が波打ち際に座る。
俺もその隣に腰掛けた。
「恋人の調子はどうだい?」
「あー、思わしくない」
答えながらレジ袋の中から缶ビールを出し、彼に渡す。
彼はカシュッといい音を立ててプルタブを起こし、ぐびぐびと喉を鳴らしてビールを飲んだ。
「あー、おいしー。
海の中にはこんなものないからね」
「そうだな」
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