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苦笑いしつつ、俺も缶ビールを開けて飲む。
上半身全裸の男の下半身は魚で、彼はいわゆる人魚というヤツだった。
知り合ったのは少し前、釣りをしていた俺の針にかかった。
そのときは驚いたというより、驚きすぎて反対に釣り針にかかる間抜けな人魚がいるのだと可笑しくなった。
彼は人間の世界に興味津々で港や桟橋に近づいているらしい。
それで運悪く、俺の竿にかかった。
目をキラキラさせていろいろ聞いてくる彼が面白くてそれ以来、親しく付き合っている。
「僕も人魚の薬が人間に効かないか調べてみたんだけど、反対に毒になって殺してしまうらしい。
役に立てなくて申し訳ない」
本当にすまなさそうに彼が詫びてくる。
「いや、いい。
こっちこそ、気を遣わせてすまないな」
それに人魚の薬が役に立たなくても、彼には俺の役に立つ方法がある。
しかし俺はそれを切り出すのを迷っていた。
「君には本当にお世話になったから、どうにかしてやりたい気持ちは山々なんだけどね……」
二本目のビールを飲みながら、はぁーっと酒臭い息を彼が吐く。
「……なあ」
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