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しかしこれからのことを考えると、そちらのほうが罪悪感が薄くてよかった気がする。
「君。
今から君は食べられるってわかってるのかね?」
「キィィーッ」
僕が問いかけた途端、人魚がどこから出したのか甲高い声で鳴き、思わず耳を塞いでいた。
こんな超音波を発せられたら、僕の鼓膜が破けてしまう。
さっさと口を塞いでしまおう。
準備していた粘着テープを手に人魚へ近づく。
口へテープを貼ろうとしたが。
「いたーっ!」
危険を察したのか、人魚に咬みつかれた。
ギザギザの歯が僕の手に刺さる。
「おい、離せ!」
僕の手を持ってガジガジと歯を立て続ける人魚を引き剥がす。
危うく肉を食いちぎられるところだった。
「ったく。
いったー」
じゃばじゃばと景気よく消毒液を手にかける。
念のために破傷風やら狂犬病やらの予防注射をしておいてよかった。
どんな病気を持っているのかわからないからな。
「くっそー」
人魚はバカにするかのように、キィキィと頭がおかしくなりそうな超音波で笑っている。
それに頭にきて、完全に覚悟が決まった。
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