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「ただいまー」
「おかえりー」
家に帰ると恋人は、だいぶ調子がいいのかベッドで半身を起こしタブレットで本を読んでいるようだった。
「すぐにメシの用意をするな」
「メシの用意って、僕はもう食べられないの知ってるだろ」
忘れているのかと彼が呆れる。
「わかってるけど、気分の問題」
それに笑って返しながら、キッチンへと立った。
友人の肉は、固形物を受け付けなくなった恋人のためにポタージュ状に加工する。
「ほら、メシ」
「はいはい」
彼は諦めたかのようにタブレットを傍らに置いた。
簡易テーブルを置き、その上に料理した友人の肉を並べる。
「これなら少しは食べられるだろ」
「そうだね」
恋人が食べてくれそうで、安心した。
しかしスプーンを持ったものの、すぐに下ろしてしまう。
「ねえ」
「なんだ?」
「これは君が、食べるべきだと思うんだけど」
じっと、恋人がレンズ越しに俺と目をあわせてくる。
どう見ても彼のための料理なのに、なぜこんなことを言うのだろう。
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