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俺をじっと見る、恋人の目はどこまでも真剣だった。
「僕はずっと、君に僕を覚えておいてほしい。
そうすれば永遠に、君と一緒にいられる」
恋人のいわんとするところはわかった。
しかしそれと、人魚の肉を俺が食べるのとは繋がらない。
「じゃあ、これを食べればいいじゃないか。
それでオマエが俺を覚えておいてくれれば、永遠に一緒にいられる」
「それじゃダメなんだ」
彼が首を振って俺の言葉を否定する。
「僕は人魚の彼を知らない。
僕が生き続けたところで、人魚の彼を覚えていてあげられないんだ」
「でも、アイツはそんなこと、ひとことも……」
彼が俺の手を握り、またううんと首を振る。
「きっと人魚の彼だって、君に覚えていてほしいと願っていたはずだよ。
だって、ライバルだからね、それくらいわかる」
悪戯っぽく笑って彼が頷く。
恋人はどこまで知っているのだろう。
それでも俺は、オマエのために友人に手をかけるほど、深く愛しているのに。
「だから、ね。
これは君が食べて」
恋人が、テーブルの上の料理を俺のほうへと押す。
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