女優

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いらいらと携帯の画面に指を走らせる。 シミや老化に効く化粧品や薬、食品はもうほとんど試したものばかりだった。 「なにか、なにかないの」 無意識に親指の爪をガリガリと噛んでいた。 普段なら爪が痛むこんなこと、絶対にしない。 けれど今はそれほどまでに苛々としていた。 情報は次第に胡散臭いものへと変わっていく。 若い女性の血を浴びる、胎児の生き肝。 超えてはならない一線だとわかっていながら、ほんの少しの弾みでそちらへ踏み出してしまいそうな私がいた。 「これ、これよ……!」 しかしそのうちついに、法的にも倫理的にも問題のない方法に辿り着く。 それが――〝人魚〟だ。 いや、人魚の肉を食べれば不老不死になるという話自体は知っていた。 けれど人魚など伝説の生物、存在しないと思っていた。 しかしそれが、ごく稀に上がる漁港があるというのだ。 速効で連絡を取った。 運のいいことにその漁港は思いの外近く、車で二時間ほどの距離だ。 人魚が上がったら知らせてくれるという。 ただ、酷く珍しがられたのが不思議だった。 連絡は予想よりもずっと早く来た。
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