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もしかして不快にしたかと思ったが、社長は可笑しそうに笑っている。
「君のそういうところ、私は好きだよ」
息をつくように社長が水を飲む。
「ありがとうございます。
しかし、社長に長生きしてもらいたいのは本当です」
彼は僕によくしてくれ、叔父と甥くらいの関係になっていた。
上司よりも尊敬しており、悩みを相談したりもしている。
「君にそう言ってもらえると嬉しいよ」
眼鏡の向こうで目尻を下げ、社長がふわりと笑う。
その表情に顔が熱くなる思いがした。
「そうだ。
君、人魚に興味はないかね?」
「人魚、ですか?」
伝説上の生物だが、セレブのあいだでは不老不死の妙薬、また珍味として密かに食べられているとの噂はある。
その人魚がどうかしたんだろうか。
「そう、人魚。
馴染みの店から人魚の肉が手に入ったと連絡をもらったんだが、この状態では行けそうにない」
非常に残念そうに社長はため息をついた。
「はぁ……。
人魚の肉、ですか……」
「あ、疑っているな」
不満そうに彼の口がへの字に曲がる。
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