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「い、いえ!」
慌てて笑い、その場を取り繕った。
社長の機嫌を損ねたくない。
しかし、彼は本当に人魚など信じているんだろうか。
「まあ、疑うのも無理はない。
実際のところ、私も信じていないしね。
だいたい、人魚の肉は不老不死の妙薬だというのに、こうやって病気になっている時点で、効いてないではないか」
可笑しそうに笑いながらペットボトルを持ち上げたが空だと気づき、彼はそのへんに放り投げた。
新しいものの封を切り、ごくごくと喉へ水を流し込む。
「社長もお人が悪い」
怒らせたわけではないのだとほっとし、出されていたコーヒーを飲んだ。
「いや、すまない。
しかしこの、人魚のものだという肉が大変美味でな。
次はいつ入るのかと連絡を心待ちにしていたのだ」
「そんなに美味しいんですか、その、人魚の肉」
グルメで有名な社長が心待ちにするほどとは、かなりのものだと思われる。
「ああ」
たっぷりの余韻を持たせて彼が頷く。
それだけ、人魚の肉は美味しいのだと思わせた。
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