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長年の疑問
――人魚の肉は哺乳類のそれなのか、それとも魚類なのか。
それは僕の、長年の疑問だった。
あの上半身の見た目ならば哺乳類だが、下半身は魚なのだ。
それもイルカやクジラのようにつるりとした肌ならば哺乳類だと思われるが、鱗が生えている。
もう、完全に魚。
だいたい、哺乳類と魚が両立するのか、そこからすでに疑問だ。
まあ、ヤツがどういう種類に分けられようとそれはどうでもいい。
僕にとってアレは、肉の味がするのか魚の味がするのかが長年の疑問だった。
「……で」
目の前の、ビニールプールへと目を向ける。
そこにはなぜか、人魚が一匹入っていた。
……ん?
一匹と数えるなら、魚なのか?
いやいや、哺乳類でも小型生物は匹だ。
このサイズなら、頭か。
人に似寄りの形状だから、人もありうる。
などというのはやはり、どうでもいい問題で。
人魚はこれからの自分の運命を知らないのか、くりくりとした目で僕を見ている。
栗毛色の巻き髪にグリーンの瞳と、いわゆる西洋型の人魚だ。
日本型は手がないと聞くが、まだお目にはかかっていない。
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