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このあとザフィーラは二年の間に多くを学び、親しい侍女とマドレー出身の男とを連れて海を渡る。そこで母の素性を知り、自らの血に隠された秘密を知り、国同士の思惑にかかわり、マドレーの第四王子とも再会する。
様々な運命に翻弄されながらもザフィーラは生涯の伴侶となる人物と共に砂漠へ戻ってきて――そこからだって話は続くのだ。
赤ら顔の男が威勢を失った。それでもまだ口の中で何かをもごもご言っているので、店主はコインを集めている吟遊詩人を親指で示す。
「今日のみんながこれだけ祝儀を弾んでくれたんだ、明日もあの吟遊詩人は歌ってくれるさ。だからもう帰って寝ちまいな。でないと明日の午睡で起きられなくなって、気が付くと空に星が輝いてることになるぞ」
「うわあ、そいつはまずい。出遅れたら酒場に入れなくなるじゃねえか」
おどけた調子で男が言ったので、人々は笑い、そのまま笑顔で店を出ていく。
残ったのは店主と、吟遊詩人と、再び店内を忙しく飛び回る店員たち。
厨房に積み重なる汚れた食器はかなりのものだ。これからこの皿を洗ってしまわなくてはならない。他にも汚れた机を拭いたり、床の掃除だって残っている。
「どれ、手伝うとするか」
酒場の主人も腕まくりをしたままの太い腕で片付けに参加する。
吟遊詩人が来ると後片付けはいつも大変だ。だけど明日も詩が聞けると思えば少しも苦にならない。
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