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終わりの話。または、語り出し。
都市国家トゥプラクはいつものように天気が良い。
おかげで作物はすくすくと育っているが、人間にとっては「もう少し建物内で涼を取っていたい」と思わせる強さの日差しだ。
外へ出る仕事を少しでも後にしたい人々は屋内での用事を殊更ゆっくりとこなし、その緩慢な動作は午後の気怠い空気を演出するのにも一役買っている。
織物屋の色鮮やかな絨毯の上で、白い猫が大きくあくびをした。
ちょうどそのとき、中央にあるオアシスの方から風が吹いてきた。温く揺蕩う空気を包み込んで押し去っていく女神の息吹は、日向で働くのを億劫がる人間たちを鼓舞しているかのようだ。
軒先の日陰部分までを掃き掃除をしていた少年が目を細めて顔をあげ、大きく息をつく。
そして彼は、細めたばかりの目をすぐに見張ることになった。
「――商隊だ」
その声を聞きつけた店主が外へ出て来て街の門を見やる。
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