導き

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 誕生日から五日後の昼、ザフィーラは部屋を出ることになった。  最近の王宮は誕生日の時よりも白い肌の男たちが増えている。その中において、褐色の肌をしたマドレーの第四王子はあの日からザフィーラの前に姿を見せていなかった。もしかすると今日あたり現れるかとザフィーラは思ったが、案内役としてやってきたのは見たことのない若い男で、ホセですらない。 「イバン・フランコと申します」  トゥプラク風の服を着て、腰に剣を佩いた白い肌のイバンはすっと背を伸ばし、頭を下げる。 「王子殿下のご命令により、ご案内とお手伝いに参じました。私の手が必要でしたら何なりとお申し付けください」  イバンは先に立って離宮まで行く。部屋に着くと彼は扉の横に立った。 「女性のお部屋に入るのは失礼かと存じますので、私はこちらにおります。ご用の際にはお呼びください」  侍女たちはイバンに嫌悪の瞳を向け、「あんな男の手なんて絶対に借りるもんですか」と言って室内を整え始める。その声が聞こえていないはずもないだろうに、イバンは部屋の外で静かに立っていた。
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