終わりの話。または、語り出し。

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 まず目についたのは多くのユシュ鳥だ。退化した翼の代わりに大きな体と屈強な足を得た茶褐色のこの鳥は、人が乗るのにも荷を運ぶのにも使える。そしてそのユシュ鳥たちを扱うのは、ゆったりとした長い白の衣を纏って日除けのターバンを巻いた商人たち。  人口七万を数えるこのトゥプラクからは三つの方向へ行ける。農業はもちろんだが、交易もこの都市にとってはとても重要な要素だった。  織物屋の店主は、よし、とほくそ笑む。こちらの門から商隊が来てくれたとは運がいい。いかにうまく商談を持ちかけるか考えていたとき、商隊の中にいる一人の人物を見つけた。途端に、店主の頭の算盤はすべて吹き飛ぶ。 「おおい、商隊が来たぞ! しかも吟遊詩人を連れた商隊だ!」  店主の声を聞きつけた人々があちこちから姿を見せ、大通りに歓声を響かせる。  寝ていた猫が飛び起き、尻尾を下げて奥の部屋へ駆けて行った。
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