大きな木と可愛い木

1/1
前へ
/1ページ
次へ
お姉ちゃんとリラの家には 広い庭がありました。 とてもよく手入れされている庭です。 なぜなら、お父さんが この庭を大好きだからです。 お姉ちゃんもリラも この庭が大好きでした。 ある日、お父さんが言いました。 「君たちも一本ずつ木を育ててみるかい?」 お姉ちゃんが選んだ木は 伸びやかに枝葉を広げて すくすくと育っていきました。 みんな、その立派な姿に ため息をこぼします。 お姉ちゃんの木は立派だね。 一方、リラの木は 全く枝葉が伸びません。 こじんまりとして 小さいままです。 お姉ちゃんの木が褒められるたびに 寂しくなって 涙がほろりと溢れてしまいます。 それでも 決して大きくなることはないその木を 毎日コツコツ世話していました。 お姉ちゃんは何をしても 人より抜きん出てみんなの憧れの的です。 それに比べてリラは、何をしても 人よりゆっくりで目立たない子でした。 お姉ちゃんみたいになりたいと 時には涙がほろりと溢れてしまいます。 ある晴れた日曜日 お父さんとお姉ちゃんとリラは お庭のテーブルでランチのサンドイッチを食べていました。 お父さんが言いました。 「2人とも、自分の木をよく育てて感心したよ」 お姉ちゃんがにっこり笑って リラの顔を覗きます。 するとリラは 下を向いてしまいました。 「私の木は大きくならない」 そういうと どうしても、涙がほろりと溢れてしまいます。 2人の様子を伺ってお父さんは お姉ちゃんに尋ねました。 「お姉ちゃんはなぜ、あの木を選んだのかな?」 すると 「私は、大きな木が欲しいなって思ったの  だから、大きくなる木を調べて選んだの」 スキップしながら 自分の木の下に行くと ぐいっと見上げてイタズラっぽく笑いました。 お父さんとリラも見上げました。 「いい木を選んだね  大きくなる木を調べて  こうしたいと目標を決めて立派に育てる  素晴らしい事だよ」 と、お父さんは嬉しそうに言いました。 こちらを向くとお父さんが言いました。 「リラはなんで、あの木を選んだのかな?」 3人は小さな木を囲むように集まりました。 「・・・可愛いから」 ポツっと言いました。 「ほんと、可愛い!」  お姉ちゃんが人差し指で葉っぱの先っぽをちょんっと触ります。 「この木は大きくならないけれどすぐに若い芽がのびる。  リラは剪定が丁寧だから  どこから見ても可愛らしく手入れができてるね  誰にでもできる事ではないよ」 お父さんは誇らしげに微笑んで言いました。 するとリラのほっぺが お花のつぼみのようにぷくっと ピンク色になりました。 「リラ! 可愛い!!」 お姉ちゃんは頬を寄せてきゅっと抱きしめました。 「あーー!  お父さんも抱きしめたい!!」 そう言って、大きく手を広げると 娘2人は きゃーっと楽しそうな声をあげて逃げるのでした。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加