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あんよは上手
「バレバレだよ。ゆちか、最近よくキョロキョロしてる。門倉君探してるんじゃないの? んで、門倉君と話してると思ったら、バイバイした後に後ろ姿をじーっと見てるの、気づいてないの?」
「うっそ!」
「ホント」
うわー!
うわー!
何だそりゃ!
「ゆちか、門倉君の事好き?」
「……好きかどうかはわかんね。でも転校、ショックはショックかも」
「それ、本人に言った?」
「言えねえよ。ただの友達だし」
それ言って、何になんだよ。
「何で? そんなの友達だって言うでしょ。私はもしゆちかが転校するってなったら泣くよ。寂しいって、やだって言うよ。駄々こねるよ」
「う」
「今のまま気持ちを吐き出さないまま門倉君が転校したら、ゆちか絶対後悔するよ。だから、気合いを入れなおしたら?」
さすが、あたしらの御意見番。こりゃアカン、本気も本気だ。とはいえ。
「なあ。今日じゃなくて今度じゃダメか?」
心と体の準備がだな。
「あー………………別にいいんじゃない?」
「そっか、それなら助かる」
涙目で鼻をかんでる店長さんには悪いけどな。
てか泣くな。
頷くな!
何か恥ずかしいだろ!
「店長さん、今日はすみませんでした」
「さーせんっしたあ!」
「気にしないでいいですよ。準備万端で来てくださいね」
店長さん、ガチいい人だ。
よし、今度来る時は絶対頑張ったる……!」
「さ、帰るよ? ほら」
んあ?
何だ?
「何なん、この手」
「へなちょこゆちか♪ 手え、繋いであげる」
「……………は?」
「床、油で滑るから気をつけないとダメでちゅよ?」
「!!!」
くっそ煽り、入れてきやがった!
アヒル口して首を傾げてんのも、絶対ワザとだろ!
でも。
でも、だ。
佳奈はあたしに、きっとそんなことを言いたいわけじゃない。優しくてホンワカしているくせに面倒見がいいウチらの癒しが……人に嫌な気持ちをさせることで、きっと自分もダメージを受けるのをわかっててやってる。
そこまでして、あたしに根性入れろって言ってんだ。
「ありゃ? ゆちかたん、どうしたんでちゅかあ?」
……きっとお!
心を鬼にしてやってるんだあ!
……よな?
ちょっと楽しそうなのは気のせいだよな?
んだが、こうなったら!
気合い入れなおしたる!
やったらあ!
「店長さんっ! 3倍ラーメンいっちょくれやあああ!」
「あ、私も私もー♪」
「3倍麺、2つ頂きましたー!」
「「「「応っ!」」」
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