氷牢の不死鳥

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 まゆりは孤児だった。  元いた国の名前はしばらくして知った。    ――それを知っているということは、もしかして養子としてここにくる前の私を知ってる?  まゆりは思案する。  くるっと髪を指に絡ませた。 「お茶出しますね」  頭を切り替えを。  お茶の追加をしようと立ち上がった。    急に立ち上がった体には負担だったらしい。  まゆりの意思に反して視界は暗くなりかけ、ふらりと倒れかける。  紫蘭が肩を持ってくれていた。 「すまない。大丈夫か?」    紫蘭は触ることを詫びる。  打撲という二次被害を起こさないように支えてくれた。  ――大したことじゃないのに。ここまで心配されるなんて。なにか大切な人をなくした、とか?
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