氷牢の不死鳥

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   提灯が視界を美しく彩る。  風鈴が耳障りの良い音を響かせていた。  そこに場違いの雪。  地も空も彩りを見せていた。  この街の一番で唯一のイベントが終わり、帰路につく者たちにこの宿の通りが賑わいはじめる黄昏時。  近代的な建物とそれと対照的に古風な茅葺きが混ざる特徴的な町並みは橙色に染まっていった。  その余所行き姿に普段の街並みを知っている者としてはまるで自分が旅行者の気分。  季節がずいぶん外れた雪。  それと混ざりあい通常の猛暑は中和。ちょうど良い気候になって今年の祭り。熱で倒れる者はいなかったと聞く。  そういう意味だと、この異常気象も悪くないと思う。 「今年も何事もなく祭りが終わってよかったよ」
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