第三話:警視庁の懸賞金の謎

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第三話:警視庁の懸賞金の謎

「……夕刻に、何のご用ですか?」 ひゐろは、共同水道を使っていた近所の女にたずねた。 「この絵葉書の男、この家に出入りした男じゃありません?」 その女は、一枚の絵葉書を差し出した。 ―――活動家 斎藤英太郎  右の者は市中で印刷物を配布し、社会主義活動を行った罪で指名手配中。追って犯人逮捕に引渡されたる殿方に五十圓の懸賞金を進呈 警視庁 ……(指名)手配書だ。斎藤さんの写真と名前が書いてある。 犯人逮捕で警察に引渡したら、懸賞金を進呈するということだろうか。ひゐろはそれを見て、とても驚いた。この女は斎藤さんを捕まえて、懸賞金の五十圓を得ようとしているのか。 ひゐろは、絵葉書を近所の女に返した。 「うちに出入りしていた男は、確かにこの方に少し似ているかもしれません。けれども少し顔貌が違うように思いますし、この男より痩せている気がします。別人です」 ひゐろはきっぱりと否定した。 「それじゃ、出入りしていた男の名前は何とおっしゃるの?」 近所の女は納得しないようで、再びひゐろにたずねた。 「……さぁ、行きずりでしたから、名前も存じ上げません」
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