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よりによって、日本橋の露店で絵葉書を売っているところで、斎藤さんの手配書が配られていたとは。書生というのだから、斎藤さんの知人や友人の露店の可能性が高いと、ひゐろは考えた。いずれにしろ警察は絵葉書を印刷しても、斎藤を引致したいということがわかった。
ひゐろは再び台所に戻り、夕飯に鯖の味噌煮をつくっていた。
漂ってくる味噌の香りを嗅いでいるうちに、突然吐き気に襲われた。
玄関に飛び出し、嘔吐する。
―――お母様のおっしゃる通り、私は妊娠しているのかもしれない。
明日は、産婦人科で調べてもらおうとひゐろは思った。
翌日、ひゐろは十五時に、錦糸町の駅前にある産婦人科へ向かった。
錦糸町の駅は、いつもより混んでいるように感じた。
“そうだ。今日から『平和記念東京博覧会』の開催があるからだわ”と。
結局『平和記念東京博覧会』に、珠緒を誘えないままだったなと思いながら。
錦糸駅前の病院には、おなかの大きな女性や、乳飲み子を抱えた女性たちが待っていた。
ひゐろは初めての産婦人科に、心臓が張り裂けそうになっていた。
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