第四話:真新しい下着を持って

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「ええ。……私、妊娠しているんです。斎藤さんの子どもを」 「……そうだったの」 「今日、病院へ行ってわかったことなのです」 「小菅監獄に行って面会するといいわ。妊娠していることも話してみたら」 「ええ」 ひゐろは湯呑みを運び、花代にお茶を差し出した。 「それから、こういう絵葉書が配られていたようです」 足立に貸してもらった、手配書の絵葉書を花代に差し出した。 「日本橋の露店で絵葉書を売っている人たちが、封入していたようです」 花代はひゐろから、手配書の絵葉書を受け取った。 「露店で絵葉書を売っているのは、書生も多いわね。斎藤さんの帝大の知人や友人が、警察の捜査に協力したのかも」 「……ええ、そんな気がしています」 「誰か五十圓の懸賞金をもらったのかしら?それが癪だわ!」 花代は少し怒ったふりをして、ひゐろを笑わせた。 花代はひゐろに、手配書の絵葉書を渡した。 「ところでオートガールの仕事は、続けるの?」 「ええ。当面は」 「おなかの子に負担がかかるから、無理はしないように」 「はい。あと二カ月程度働いたら、しばらくお休みしようと思っています」
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