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「ええ。……私、妊娠しているんです。斎藤さんの子どもを」
「……そうだったの」
「今日、病院へ行ってわかったことなのです」
「小菅監獄に行って面会するといいわ。妊娠していることも話してみたら」
「ええ」
ひゐろは湯呑みを運び、花代にお茶を差し出した。
「それから、こういう絵葉書が配られていたようです」
足立に貸してもらった、手配書の絵葉書を花代に差し出した。
「日本橋の露店で絵葉書を売っている人たちが、封入していたようです」
花代はひゐろから、手配書の絵葉書を受け取った。
「露店で絵葉書を売っているのは、書生も多いわね。斎藤さんの帝大の知人や友人が、警察の捜査に協力したのかも」
「……ええ、そんな気がしています」
「誰か五十圓の懸賞金をもらったのかしら?それが癪だわ!」
花代は少し怒ったふりをして、ひゐろを笑わせた。
花代はひゐろに、手配書の絵葉書を渡した。
「ところでオートガールの仕事は、続けるの?」
「ええ。当面は」
「おなかの子に負担がかかるから、無理はしないように」
「はい。あと二カ月程度働いたら、しばらくお休みしようと思っています」
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