第四話:真新しい下着を持って

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「あの仕事は、いつでも復帰できるわ。元気ならね」 花代は立ち上がった。 「…さて、子どもがおなかを空かせているだろうから、そろそろ帰るわ」 「工場の帰りに、いつでも立ち寄ってください。銀座にも顔を出してくださいね」 「また遊びに来るわね」 ひゐろは玄関先で、花代を見送った。 その後ろ姿を見つめながら、自らの人生を思った。 まるで花代さんの姿を、追っているようだと。 翌朝、ひゐろは足立家に足を運び、手配書の絵葉書を返しに行った。 斎藤がすでに警察に捕まったことを伝えると、 「五十圓で買いたいものを考えていたのに」 と言い、悔しがった。捕らぬ狸の皮算用というのは、こういう人のことを言うんだなと思った。 その足でひゐろは、小菅監獄(こすげかんごく)へ行った。 面会の申請を行うと、一般面会という形で斎藤に会えることになった。 警察官立ち会いのもと十五分であったが、それでもひゐろはうれしかった。 十五分ほど待っていると、奥から汗を拭きながらやってくる斎藤の姿が見えた。 斎藤はひゐろの顔を見て、汗を拭う手が止まった。 「……面会って、ひゐろさんだったのか!」 斎藤は、いささか痩せているように見えた。 ひゐろは、真新しい下着を包んだ風呂敷を差し出した。
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