第四十六話:秋の日の出来事

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この不景気の中、十分幸せと言えるんじゃないかな。 ひゐろはそう思いながら、眠りについた。 翌日の昼頃のことだった。 「ごめんください!」 という女性の声がした。 ひゐろは、どなたがお越しになったのだろうと思っていたが、しばらくすると(ふすま)の向こうから女中の声がする。 「お嬢様、お客様です。お通ししても、よろしいでしょうか?」 「……どなた?」 ひゐろがたずねると、 「私よ。花代」 と(ふすま)の向こうから声がした。 「……花代さん?どうぞお入りになって」 ひゐろは花代を通した。 (ふすま)を開けるなり、花代は驚きの声を上げた。 「こちらがお子さんなのね!山口さんからお聞きしたわ。ひゐろさんに、子どもが生まれたって。男の子なのでしょう?」 ひゐろは花代に匡を渡し、顔を見せた。 「そうです。(ただす)という名前で、夫がつけたのです」 「匡か。良い名前ね。斎藤さんらしいわ」 花代は匡の顔を見ながら、そう語りかけた。 「初めてのお産は、大変だったでしょう?驚きの連続だったのじゃないかしら」 花代は、ひゐろにたずねた。 「ええ。苦しいし、あまりにも長時間でびっくりしたわ。出産しながら、おにぎりを食べるとは思いもしなくて」
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